タグ: 社会派ドラマ

アートの概念を揺さぶられる!映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』ネタバレ&感想

全ては仕組まれたことなのか、あるいはリアルなドキュメンタリーなのか…。

ちびぞうの、過去に観た映画もブログにまとめとこうシリーズ!ですね。

今作は、ストリートアート”グラフティ”で有名になったカリスマアーティスト、”バンクシー”初監督のドキュメンタリー!!

バンクシーというイギリスの覆面アーティストの作品はネットでニュースになることもしばしばあり、目にしたことがあって「なんてかっこいい作品を創る人なんだろう」と思っていたんですが…まさか映像の才能もあるとはね!!!DVDや画集も買ってしまったし、すっかりバンクシーのファンになってしまったちびぞうでした。

アップリンクさんによる公式サイトはこちら

ちなみになぜ覆面なのか?それはグラフィティのほとんどが持ち主の許可なく行われる犯罪行為(器物破損)だからですよ!!

【映画情報】

【原題】Exit Through the Gift Shop
【制作国】アメリカ・イギリス
【監督】バンクシー
【ナレーション】リス・エバンス
【音楽】ジェフ・バーロウ、ロニ・サイズ
【出演([]内は役名)】

  • ティエリー・グエッタ
  • スペース・インベーダー
  • シェパード・フェアリー
  • バンクシー

【公開日(日本)】2011年7月16日
【上映時間】90分
【配給】パルコ、アップリンク
【映倫区分】G
【IMDB】8.0/10.0  (およそ55,800人の評価)

【あらすじ】

ストリート・アートに関するドキュメンタリーを制作していた映像作家のティエリー・グエッタは、幸運にもバンクシーの取材に成功する。しかし、グエッタに映像の才能がないと気づいたバンクシーはカメラを奪い、グエッタを“ミスター・ブレインウォッシュ”というアーティストに仕立てあげ、カメラの前に立たせる。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.6/5.0

おおまかなあらすじはこんな感じ

とあるビデオ撮影依存な男(ティエリー・グエッタ)がひょんなことからストリートアートに出会い、それを描く人たちを追い、制作過程を撮影する。
最初はただ撮るだけだった男もバンクシーとの出会いによって変わっていく。映像編集に手を出したり、果ては自分も”アーティストMBW(ミスターブレインウォッシュ)”となり、初めてのショーを成功させようと奮闘する…。

グラフィティと言えば

ちびぞうが高校時代に仲が良かった女の子がグラフィティをする男の子の話をよくしていたなぁ…と思い出しました。多分地元で、グラフィティをやってる若者が当時、いたんだと思います。それこそ15年位前、ネットも携帯も誰しが持っているという時代ではなかったけれど、どこからともなくやってきた”グラフィティ”というものは確かに人々を魅了しながら、海の向こうの日本にも広がってきていたんだなぁ…と思うと、「落書き」なんて言葉では表せない一つの文化なのかなと思ったりしますね(許可がなければ犯罪ですけども!!!!!!)

脱線しました。

この作品を観ていると、本物のアートとそうでないものの境目がボケてきて、「結局はお客に高い金積ませたモン勝ち」みたいな側面が見えてきます。
そして”あんたらが高い金出して買ったものは所詮この程度のものだよ”と皮肉ってるような…そんな意図も感じましたね。

最初はMBWがアーティスト達のドキュメンタリーを撮ろうとしていたのに、途中からバンクシーが監督してMBWを追うドキュメンタリーを作る逆転の流れも面白い!!バンクシーがMBWの編集した動画を見て「落ち着きのない頭のおかしいヤツが繋げただけの動画(セリフうろ覚え)」とズバッと切り捨ててたところで爆笑してしまいました(笑)

この非凡な男と平凡な男の対比も面白いですよね。

周囲の環境に影響されて、MBWが夢を見ていく過程も面白切ない。

夢を見ていく…と言っても収入的にはMBWの個展は大成功してしまうし、どこからが才能なのかってもう分からなくなりますね。

まとめ

いわゆる芸術の勉強なんて1ミリもしたことのないちびぞうには作品の真の価値とかは全くわからないけども、作中出てくるバンクシーの作品には心動かされたし、とても強い憧れを感じました。なんというか、技術だけなら誰でも身に着けられるけど、そこからもう一歩先んじるには「他人に出来ない発想」というのが必要なのだなと。しかもそれを誰より早くやってみる、という度胸や挑戦心も必要。

創作好きならきっと「アートとは一体なんぞや」と頭を悩ませながらも楽しめるし、良い刺激をもらえる映画ではないかなと思います!!

結論:カリスマは何やっても成功する。

 

 


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画像引用元:映画.com/IMDB

メキシコ移民をヘッドショット!映画『ノー・エスケープ 自由への国境』ネタバレ&感想

正体不明の襲撃者。
水なし、武器なし、逃げ場なし。希望はあるか―――

大好きなガエルさんの映画なのでね、映画館で観ようと思ったんですけども、一緒に観に行く仲間の琴線に触れなかったようで、あえなくDVDでの鑑賞と相成りました。

どうも、ちびぞうです、こんにちは。

ガエルさんことガエル・ガルシア・ベルナルはもう昔っから好きな俳優さんでして。
今はポール・ダノが一番なので二番目に好きな俳優さんですかね。

彼はこう…キャリアを積んでいるわりにはあまり当たらない俳優さんというか…(ちびぞう的に)なんというか出演作にアクが強いものが多いんですよね(笑)
一番最後に観たのは『ロンリエスト・プラネット 孤独な惑星』だったかなぁ…あれもいまいちだったなぁ。

えっ!今調べたら監督は『ゼロ・グラビティ』の人!?

→と思ったら違ったー!正しくはゼロ・グラビティを監督していたアルフォンソ・キュアロン監督の息子さんでした(笑)ゼログラ~では共同脚本を担当していたようです。七光りかぁ…

あ、公式サイトはこちらです。

【映画情報】

【原題】Desierto
【制作国】メキシコ/フランス
【監督/編集】ホナス・キュアロン
【脚本】ホナス・キュアロン、マテオ・ガルシア
【製作】ホナス・キュアロン、アルフォンソ・キュアロン、カルロス・キュアロン、アレックス・ガルシア、シャルル・ジリベール
【製作総指揮】デビッド・リンド、ガエル・ガルシア・ベルナル、ニコラス・セリス、サンティアゴ・ガルシア・ガルバン
【撮影】ダミアン・ガルシア
【美術】アレハンドロ・ガルシア
【音楽】ウッドキッド
【出演([]内は役名)】

  • ガエル・ガルシア・ベルナル[モイセス]
  • ジェフリー・ディーン・モーガン[サム]
  • アロンドラ・イダルゴ[アデラ]
  • ディエゴ・カターノ[メチャス]
  • マルコ・ペレス[ロボ]

【公開日(日本)】2017年5月5日
【上映時間】88分
【配給】アスミック・エース
【映倫区分】PG12
【IMDB】6.0/10.0  (およそ7,000人の評価)

【あらすじ】

メキシコとアメリカの間に広がる砂漠の国境地帯を、モイセスら15人の不法移民たちが越えようとしていた。そこへ突如として銃弾が撃ち込まれ、仲間の1人が犠牲になってしまう。摂氏50度という過酷な状況の中、水分も武器も通信手段も持たない彼らは、生き残りをかけて壮絶な逃走劇を繰り広げる。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレしているよ!)】

☆1.5/5.0

いやーこれは!!!!!なかなかに酷いですね!!!!(笑)

メキシコからアメリカへの砂漠のど真ん中の国境を越えたら頭のおかしいおじさんがライフルで狙撃してきてどんどん死んでいくよ!!!!おじさんの愛犬も襲ってきてどんどこ食べられちゃうよ!!!頑張って逃げてね!!でも車もないし圧倒的に不利!!あっという間に15人→3人→1人になって、最後は岩場でグルグルおいかけっこするよーーー。隙をついて背中から突き落とそうとしたら自分も落ちちゃってピンチだけどおっさんは足が折れたみたいだし落ちたライフル拾って形勢逆転!!!やったぜ!でもここで殺したらおっさんと同類になっちゃうからあえて放置するぜ。傷を負った女性のとこに戻って彼女を担いで人のいるところまで頑張ってあるくぞー!そろそろハイウェイだ!(完)

という映画でした。ほんとに。

これって、一体どういう目線で観ればいい映画なんですか???

アメリカへ不法入国するメキシコ移民と言えばトランプ大統領が壁作るぜ!なんて言ってたので記憶にも新しいというかまさにタイムリーな題材だと思うんですけど

それにしても雑すぎやしませんか?

え?移民ってこんな扱いされちゃうの?嘘でしょ?不法入国にしたってライフルでヘッドショットはそんな、ゾンビじゃないんだからさ…

というよく分からない気持ちで、「まぁきっとサイコなおっさんに狙われてしまって移民が大変だ!」という話なんだろうなとなんとなくは理解しつつ観たんですけど、特に面白くもなければ新しさもなく怖さもスリルもありません。移民するってこういう過酷さもあるよ!といったメッセージが隠されているのでしょうか…(いやぁさすがにそれは深読みかなぁ)

それでも、砂漠地帯で国境を超える事て人里まで辿り着くことの大変さはスナイパーがいなくてもよく分かるし、だからこそ警備も見張りもいないんでしょうね。そこに壁を作る無駄さ、とは…。

(↑なんとなく画像にも緊張感がありませんね)

どうにもネタ的に社会派ドラマなのかと脳は思ってしまうので、このどう考えても『SAW』じゃん的な展開について行けないんですよねー…ソウ思いません?なんつって(不適切な文章)そういえばこのDVDの宣伝にSAWの新作があった(笑)

 

無理やり良かったところをひねり出すなら、いつまで経っても老けない我らがガエルさんの演技を終始見られることと、タイトルバックが最初と最後に出てくるんですけどそれがカッコよかった点(まぁ、どう考えても『ゼロ・グラビティ』から影響受けてますけども)、砂漠の映像が素晴らしかったですね。

あとエンディング曲もかっこよかったなーと思ったので紹介します。

まぁ基本的にガッカリすること間違いなしですけども、ガエルさんファンは一度観ておいてください。

そういえば、ロンリエストプラネットが微妙だったと最初に書きましたが、これと似たような退屈感がありましたね。

それにしたって88分であの退屈感…

 

 


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画像引用元:映画.com

粉ミルクで赤ちゃんが…映画『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』ネタバレ&感想

子どもたちを守るため、男は世界最大企業を敵にまわした――

インド映画好きのちびぞうの食指が伸びました!!!

何の前知識もなく、DVDにて鑑賞。ぶっちゃけ手に取るまではこの邦題エロくない…?と思っていました、汚れていたのはちびぞうの心でした。

しかし安心してレジへ持って行ってください、本作には「あるセールスマンの告発」という非常に真面目な副題がついていますからね。

何の話かよく分からなくなってきたところで本題へ。

この監督さん、『鉄くず拾いの物語』『ノーマンズランド』の人でした!!!実話ものが得意なんでしょうかね~『ノーマンズランド』は好きな作品なので、期待が高まります(*’ω’*)

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】Tigers
【制作国】インド/フランス/イギリス
【監督】ダニス・タノビッチ
【脚本】ダニス・タノビッチ、アンディ・パターソン
【製作】プラシタ・チョーダリー、クシティジ・チョーダリー、グニート・モンガ、アヌラグ・カシャップ、アンディ・パターソン、キャット・ビラーズ、チェドミール・コラール、マルク・バシュット
【製作総指揮】アチン・ジャイン、カレン・テンコフ、ミヒャエル・ベバー、プラビーン・ハシュミ
【撮影】エロル・ズブツェビッチ
【衣装】ニハリカ・カーン
【編集】ブレールナー・サイガル
【音楽】プリータム
【出演([]内は役名)】

  • イムラン・ハシュミ[アヤン]
  • ギータンジャリ[ザイナブ]
  • ダニー・ヒューストン[アレックス]
  • カーリド・アブダッラー[ナディーム]
  • アディル・フセイン[ビラル]
  • サティーヤディーブ・ミシュラ[ファイズ]
  • マリアム・ダボ[マギー]
  • ハイノ・フェルヒ[ミヒャエル]
  • サム・リード[フランク]
  • ビノード・ナグパル[ムスタファ]
  • スプリヤ・パタク[アヤンの母]

【公開日(日本)】2017年3月4日
【上映時間】90分
【配給】ビターズ・エンド
【IMDB】7.2/10.0  (およそ300人の評価)

【あらすじ】

あるグローバル企業がパキスタンで粉ミルクを強引に販売したため、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児の死亡率が増加してしまう。自分の販売した粉ミルクが子どもたちの命を脅かしていることを知ったセールスマンのアヤンは、企業を訴えようとするが……。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.8/5.0

いやー、面白かった!

1977年から実際に起きた「ネスレ・ボイコット」を基にした作品ですね。

主人公のアヤンを演じたイムラン・ハシュミさんが既視感ある顔をしていて…ブラピのような…エリック・バナのような…誰かに似てるんだよなぁ…

大体のあらすじ

元々、国産の製薬会社の営業をしていた主人公(アヤン)だったが、国産の薬はもう置いてもらえないところがほとんど。多国籍企業である大手のラスタ社が募集していた「大卒者のみ」という求人に応募、大卒ではなかったが奇跡的に受かり、ラスタ社の粉ミルクをセールスすることになる。

まず上司に大金を渡され、「医者にこれを配って、うちの粉ミルクを出してもらえるように頼め」としょっぱなからアウト―!なやり方で自社製品を売るように指示されるアヤン。

医者の好みや家族構成などを調べつくし、彼らの欲しがっているものを渡しては営業成績を伸ばす毎日だったが、ある日医者のファイズに「ラスタの粉ミルクを飲んでいる赤ちゃんが下痢を繰り返し脱水症状で死んでいる」という現実を知らされる。

その凄惨な状況にショックを受けたアヤンは退社を決め、粉ミルクの販売を中止するように企業を相手に闘い始める―――という感じ。

もうね。大企業の後ろには政府あり。こわいこわい。

構成が面白い!

この企業の悪事を暴くために、アヤンを主人公にしたドキュメンタリーを撮ろう、という体で行われる撮影風景とドラマ部分を交互に描くというモキュメンタリー風の構成になっています。

序盤に思いっきり”ネスレ社”という文字を出しておきながら「さすがに企業名はふせておこうか」という意見が出て劇中の社名は全て”ラスタ社”に統一される(笑)

いやいや、後から伏せる意味(笑)

この、過去と現在、そして撮影風景とドラマ部分を交互に挿入するやり方は映画としても飽きることなく観れて面白いやり方だと思いました。

悲惨な写真や動画も出るので注意

劇中に登場する、弱った乳児の写真や動画はおそらく当時の実際の映像を使用していると思われます。脱水症状でやせ細ってしまい、骨と皮だけのようになってしまった赤ちゃん。私たちの知っている乳幼児の姿(ぷくぷくもちもちとしたコロコロのまんまる赤ちゃんのイメージ)とはかけ離れています。観ていて非常に胸が痛みますので、耐性がない方はやめておいた方がいいかもしれません。

この粉ミルク問題、粉ミルク自体に危険性があるということではなく、

貧困層の家庭に対し医師が安全性をしっかりと配慮したうえで処方した粉ミルクではなかった、ということ。金の力で買収され、ラスタ社の言うがままに粉ミルクを処方していた。ここに問題があったわけです。

医師が粉ミルクをすすめ、母乳が出るのにも関わらず母乳を飲ませることをやめてしまう母親が出たり、貧困層の家庭では汚染された水で粉ミルクを薄めに薄め飲ませることで栄養が欠乏してしまう、そして汚染された水による病気を併発する…そして乳幼児が死んでいく…という事なんです。

何が一番恐ろしいかと言うと

物語のオチというオチはなかったですね。

ラスタ側がアヤンの訴えは脅迫目的であると言ってきて、撮影していた番組を流すかどうかという部分で悩まさせられる。

どうなるの、これ!?というところで物語は終わります。

そして、主人公のモデルとなった人は故郷で暮らすことは出来ず、外国に家族を移住させ暮らすようになった…というテロップが流れます。

企業の力があまりにも大きく、本国パキスタンでは平和に暮らすことも出来なくなってしまったんですね。結局、撮影していた映像が流されたのかどうかは明かされません。

なぜなのか?

ちびぞうは、映画にして訴えても何も変わらない、という事が言いたかったのかな、と思いました。ネスレボイコットを調べてみると、終息宣言されていない、とwikiには書かれていました。つまり、1977年から始まったこの問題も、いまだに解決されていない、ということなんです。

その事実が、何よりも恐ろしい。大企業、おそるべしです。

まとめ

エンディングは『ノーマンズランド』と似ていて、ただ真実を突きつけて終わる、という感じでした。

きっとこの監督はこの作品で少しでも問題を周知してもらおうと思ったのかな。映画としての面白さで楽しませてくれるだけでなく、こんな問題が世界にはあるよ!と教えてくれている。

私たちには映画を観て、伝聞して、とにかく「知る人」を増やすこと。それしか出来ないですが…

少しでも興味のある方には一度観てもらいたい一本です。
まとまってないけど終わり(笑)

 

 


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看守と囚人ごっこで人は狂う。映画『プリズン・エクスペリメント』ネタバレ&感想

人はどこまで残酷になれるのか―――

わーーーーしまった!これまたもアレか!スタンフォード監獄実験のやつか!

『少年は残酷な弓を射る』でファンになったエズラ・ミラーくん(最近は『ジャスティス・リーグ』のフラッシュにも大抜擢されましたね!!)に釣られて大してあらすじも読まず、

「ほうー心理実験のアルバイトね、面白そう!」

と借りてしまいました…が。

これアレです。超有名な2002年のドイツ映画『エス -es-』と同じ、実際にあった「学生を囚人と看守役に分けて2週間完璧に演じさせてみたらどういう心理的変化が起きるのか」というスタンフォード大学の心理実験を元ネタにした映画であります。エスのリメイク版はすでに『エクスペリメント』というタイトルの映画がありまして、「まぁ観たしいいか」とスルーしていたんですけども。

今作は別にリメイクというわけではなく、元ネタが同じ、ということですね。
しまったなぁ、知ってたら多分借りなかったのにな…(笑)

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】The Stanford Prison Experiment
【制作国】アメリカ
【監督】カイル・パトリック・アルバレス
【脚本】ティム・タルボット
【原作】フィリップ・ジンバルドー
【製作】ローレン・ブラットマン、ブレント・エメリー、リジー・フリードマン、カレン・ローダー、グレッグ・リトル
【製作総指揮】ケイティ・リアリー、ボブ・リアリー、ブライアン・ジェラティ
【撮影】ジャス・シェルトン
【美術】ゲイリー・バルボサ
【編集】フェルナンド・コリンズ
【音楽】アンドリュー・ヒューイット
【出演([]内は役名)】

  • ビリー・クラダップ[フィリップ・ジンバルドー]
  • マイケル・アンガラノ[クリストファー・アーチャー]
  • エズラ・ミラー[ダニエル/8612番]
  • タイ・シェリダン[ピーター/819番]
  • オリビア・サールビー[クリスティーナ]
  • ネイサン・エリス[ジェシー・フレッチャー]
  • トーマス・マン[416番]
  • キー・ホン・リー[3401番]

【公開日(日本)】2017年7月19日
【上映時間】122分
【配給】AMGエンタテインメント
【IMDB】6.9/10.0  (およそ25,600人の評価)

【あらすじ】

1971年8月。スタンフォード大学心理学部のジンバルドー教授は、夏休み中の校舎を利用してある実験を開始する。その内容は、被験者として集めた18人の男子学生たちをそれぞれ9人ずつ看守役と囚人役に分けて刑務所生活を再現し、「立場」や「役割」が人に与える影響を調べるというもの。被験者たちの行動は次第にエスカレートしはじめ暴力が横行するようになるが、教授はスタッフの制止もきかず実験続行を命じる。【引用元:映画.com

【感想】

☆2.5/5.0

うーん。映画の面白さというより、これも題材の興味深さが勝ってますね。

しかも、同じ元ネタの映画をすでに観てしまっているので、驚きも特になく。基本的にエスと比較しながら観る形になってしまいました。

エスでは確か、エスカレートした看守の暴力がいきすぎて死人が出るところまで行ってしまった感じだったかな?看守役が囚人役に尿をかける、という衝撃的なシーンが非常に記憶に残っておりまして…(笑)映画を観ていて初めてちびぞうがモザイク無しの男性器を確認したのも同作品だったように思います(笑)

それと比べますと…内容は柔らかくなっていますね。今作は、肝心の看守の暴力性が顔を出すまでが早いので実験のせいなのか元々のその人の性格なのかあやふや(一応看守役と囚人約はサイコロでランダムに選ばれるけど)、しかもその暴力性の内容はぬるい(あくまでもエスと比べ)感じになっています。途中で退場も出来るし、さすがに死人は出ませんよ!

まぁ、ベッドメイクを何十回もやり直しさせられたり、理不尽に罰を与えられたりとストレスフルな扱いを囚人が受けているのは間違いなく、観ていて気持ちの良い作品ではないので注意が必要です。

今作は囚人と看守のやりとりだけでなく、この実験を行っている教授本人も「実験に飲み込まれている」という描写があったのが良かった。そして途中でその事実に気付き、「この実験はもう終わりだ」と言いに行くシーンで終わっているのもホッとします。

しかし、本当に恐ろしいなと思ったのは教授が「この実験は終わりだ」と告げても、みんなピンと来てない顔をするところ。そこで教授は「この刑務所は閉鎖する。君たちは自由だ」と言葉を変える。そうするとようやく皆は安堵の表情を浮かべるわけです。

設定に心の底からはまり込んでしまって、現実と虚構の違いが分からなくなってくる…。「役割」が人へもたらす影響力の大きさが垣間見えて、恐ろしくなりました。

逆に言えば、人は思い込むことでいくらでも違う自分になれる…という事なのかな。

今回はこれがマイナスに働く実験でしたが、プラスに働く効果もきっとあるはず。
そんな風に考えないと、怖すぎます。

ちなみにエズラ・ミラーくんは相変わらずいい演技をしていました。

でもちょっと声が特殊で耳に障る感じだったかな…。あんまり叫んでほしくない(笑)

 

 


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画像引用元:映画.com

ホロコーストの有無を法廷で裁く!映画『否定と肯定』ネタバレ&感想

その真実に圧倒される―――

ホロコースト(ユダヤ人収容所でのナチスによる大虐殺)があったのか否かを裁判で決める!?

このとんでもない題材(勿論実話です)の映画に惹かれないわけがないじゃないですか・・・!

レイチェル・ワイズ(ナイロビの蜂)×ティモシー・スポール(ハリー・ポッターシリーズ)の演技派二人の鋭い眼光による演技勝負も見どころです!

パンフはこんな感じ!

赤と黒の二色バイカラーがお洒落!「否定」と「肯定」の二色を表していると思われます…!

原作者でもあり、レイチェル・ワイズ扮するリップシュタット教授本人のインタビューも載っています!
22Pで税込み700円…少し(ページ数が)寂しいですね。

【映画情報】

【原題】Denial
【制作国】イギリス/アメリカ
【監督】ミック・ジャクソン
【脚本】デヴィッド・ヘア
【原作】デボラ・E・リップシュタット著『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い』
【製作】ゲイリー・フォスター、ラス・クラスノフ
【撮影】ハリス・ザンバーラウコス
【美術】アンドリュー・マッカルパイン
【編集】ジャスティン・ライト
【音楽】ハワード・ショア
【衣装】オディール・ディックス=ミロー
【出演([]内は役名)】

  • レイチェル・ワイズ[デボラ・E・リップシュタット]
  • トム・ウィルキンソン[イチャ―ド・ランプトン]
  • ティモシー・スポール[デイヴィッド・アーヴィング]
  • アンドリュー・スコット[アンソニー・ジュリアス]
  • ジャック・ロウデン[ジェームズ・リブソン]
  • カレン・ピストリアス[ローラ・タイラー]
  • アレックス・ジェニングス[サー・チャールズ・グレイ]

【公開日(日本)】2017年12月8日
【上映時間】110分
【配給】ツイン
【映倫区分】G
【IMDB】6.6/10.0  (およそ12,400人の評価)

【あらすじ】

1994年、イギリスの歴史家デビッド・アービングが主張する「ホロコースト否定論」を看過することができないユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットは、自著の中でアービングの説を真っ向から否定。アービングは名誉毀損で彼女を提訴するという行動に出る。訴えられた側に立証責任があるイギリスの司法制度において、リップシュタットは「ホロコースト否定論」を崩す必要があった。そんな彼女のために組織されたイギリス人大弁護団によるアウシュビッツの現地調査など、歴史の真実の追求が始まり、2000年1月、多くのマスコミの注目が集まる中、王立裁判所で歴史的裁判が開廷した。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.6/5.0

「現実は小説より奇なり」という言葉があるように、映画としての面白さというよりかは、この題材になった裁判がとても興味深くて面白いものだったんだと思います。

ちびぞうは大元の裁判については知識ゼロでした。

まさか「ユダヤの大虐殺はなかった!それらは全てユダヤ人のねつ造だ!」と主張する人がいるなんてこの作品で初めて知ったし、驚いた。

しかし、この主張は自分の「教科書で知った」「学校で教わった」「たくさんの映画で語られてきたから知っている」というだけの知識を揺るがすには十分でしたね。本当のところはどうだったかなんて、自分で確証を持つまで調べてみたこともないし、漠然として「そういう歴史があった」と思っていただけの出来事をどうして心から「あった」と信じられたのか。自分でもとても不安になりました。

この裁判の中身は、実は「ホロコーストの有無」を裁くものではなく、ホロコースト否定論者のアーヴィングが「リップシュタット教授の書いた本の中で自分を嘘つきだと誹謗中傷した」という事について訴えたものだったんですよね。

つまり、アーヴィングの否定論が教授の言うように嘘ばかりだった場合、その誹謗中傷も「真実である」と切り返せる。そのために、アーヴィングの主張(ホロコーストはなかった)を裁判で否定する必要がある…しかしこの二者はそれぞれの界隈で非常に著名だったこともあり、ただの誹謗中傷の裁判ではなく「ホロコーストの有無を裁判で裁く」という歴史的にもセンセーショナルな裁判へと発展していくわけです。

ちびぞうは、この映画での「真実がどうだったか」という部分はそこまで大切ではないように感じました。なぜなら、ホロコーストはなかったと否定しているアーヴィング自体が差別主義者であり、他人に敬意を払えない人物…一言で言えば「クズ」のように描かれているから。

観ている人はどう考えても主人公を応援するし、当然裁判の結果だって主人公が勝つに決まってるわけです。つまり、この映画は最初から「ホロコーストはある」として作られている。

では何が大切なのか?

それは、ただの傍観者として情報を得る我々が「何を真実と信じるか」ということ。
情報を取捨選択し、自分なりの結論を出すまでに色々な可能性を考える必要がある、ということなんです。

ネットが普及し、SNS上でも嘘がまかり通る現代にとても合ったテーマだな、とも思いましたね。

印象的だったのは、裁判へ向かうリップシュタット教授へ掛けられる”応援する声”以外にもあった”中傷・避難の声”。いまだにユダヤ人への差別感情を持っている人たちが中傷しに来ている、という場面なのかもしれません。しかし、その後に来たアーヴィングにも、同じように”応援と中傷の声”がかけられる、そして、スーツに投げられる生卵…。

この場面を見てちびぞうは、この二人は、”同じ”なんだ。と感じたんです。

「否定を信じる人たち」からすればリップシュタット教授は悪であり、敵。
「肯定を信じる人たち」からすればアーヴィングは悪であり、敵。

それぞれの人たちにとって、裁判の結果がどうあれ自分たちが信じていることこそが「真実」であり「正義」なんですよね。

今作はアーヴィングが嘘や捏造した情報を見解として発表していたのもあって、結論も分かりやすくなりましたが、もし彼が誠実な人間であり、嘘もなく自分の信じることを「真実」だと発表していたら、一体どうなっていたんだろうと思います。

法廷モノとしてのエンターテイメント性を出すために、終盤、まさかの裁判官がアーヴィングを擁護?するような質問をするシーンがあります。優勢だと思っていた被告側が「まさか負けるの?」と冷や冷やするシーンですね。

しかしちびぞうは、あのシーンは物語を盛り上げるためだけのものではなく、あの裁判官の言葉にも「一つの真実」があったのではないか、と思いました。

まとめ

役者陣の目で語る力、がすごい映画でした。特に主人公のレイチェル・ワイズは裁判の間「黙秘」を徹底しなければいけない役柄上、表情だけでその心情を語っています。

対峙するティモシー・スポールも必要以上の発言はしておらず、多くの場面で表情だけで演じていました。

台詞の少ない二者の演技での闘いも含め、非常に重たい題材で非常に緊張感のある法廷バトルが観られる今作。自分なら何を信じるのか、ということを考えながら観て頂きたいですね。

イギリスの少し曇った画面、美しい建造物や小物などにも注目です。

 

 


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頑固親父が守りたかったもの。映画『フェンス』ネタバレ&感想

彼らがフェンスで守りたかったのは、ゆるぎない愛――

ちびぞう母チョイスの作品。なんとなーく黒人差別の話なのかなーという程度の前知識でレンタルして観てみました。

デンゼル・ワシントン監督・主演作。俳優さんの監督作というとあまりヒットしないイメージがあるので少し不安になりつつ鑑賞。

日本での劇場公開は無し。原作は同タイトルの戯曲のようです。

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 Fences
【制作国】アメリカ
【監督】デンゼル・ワシントン
【脚本】オーガスト・ウィルソン
【原作】オーガスト・ウィルソン『Fences
【製作】スコット・ルーディン、デンゼル・ワシントン、トッド・ブラック
【製作総指揮】モリー・アレン、イーライ・ブッシュ、アーロン・L・ギルバート、アンディ・ポラック、デイル・ウェルズ、チャールズ・D・キング、キム・ロス
【撮影】シャルロッテ・ブルース・クリステンセン
【美術】デビッド・グロップマン
【衣装】シャレン・デイビス
【編集】ヒューズ・ウィンボーン
【音楽】マーセロ・ザーボス
【出演([]内は役名)】

  • デンゼル・ワシントン[トロイ・マクソン]
  • ヴィオラ・デイヴィス[ローズ・リー・マクソン]
  • スティーブン・ヘンダーソン[ジム・ボノ]
  • ジョヴァン・アデポ[コーリー・マクソン]
  • ラッセル・ホーンズビー[ライオンズ・マクソン]
  • ミケルティ・ウィリアムソン[ミケルティ・ウィリアムソン]
  • サナイヤ・シドニー[レイネル・マクソン]

【レンタル開始日(日本未公開)】2017年6月7日
【上映時間】139分
【配給】パラマウント映画
【IMDB】7.2/10.0  (およそ70,000人の評価)

【あらすじ】

1950年代の米ピッツバーグ。トロイ・マクソンは、妻ローズと息子のコーリーと暮らしている。彼はかつて野球選手だったが、人種差別によってメジャーリーガーの夢を絶たれ、今では苦しい生活を送っていた。ある日、コーリーがアメフトのスカウトマンに見出され、でNFLを目指す大学推薦の話が舞い込んでくる。しかし、トロイは進学に反対、夢を見過ぎたと責め立て、家の裏庭のフェンス作りを強制的に手伝わせる。息子の夢を完全に潰してしまったトロイ。親子関係に亀裂が走り、ふたりを見守っていたローズとも激しく衝突することになるが・・・。【引用元:公式サイトより

【感想(ネタバレしています!)】

☆3.5/5.0

結構面白かった!

退屈な人には退屈に思えるかもしれない・・・と思う理由は、デンゼル・ワシントン演じる父親トロイの人物像!

とにかく喋る、喋る!喋りまくる!結構な早口でまくしたてます。しかも内容はあってないような過去の話だったり、奥さんとの出会いの話だったり、いかに自分が苦労して今の生活を手に入れたか、黒人差別がどうまかり通っているかなどなど。
一言で言えば「自分語り」。

序盤からのデンゼル・ワシントンの一人舞台に、ちびぞうはあまりの台詞量に圧倒されていましたが、正直しっかりと頭に入ったかと言えばそうではないです。吹き替え版だったんですが、聞いてるうちにだんだん内容が入らなくなってくる・・・(笑)台詞回しも下品だったりしますしね。

でも、この一見退屈に思える自分語りが、地味にポイントだと思っているんです。

こういう親父、いるよねっていう。

この父親像というのは、18年連れ添った妻を裏切り外で女を作った上に妊娠させたり、自分の理想や価値観を家族に押し付け息子の夢を自分の手で潰したりする人間的に欠陥のあるしょーーーもない親父。

背景に黒人差別というものがあり、それがこの父親をここまで歪ませてしまった、という部分があるのかもしれませんが、ちびぞう的にぶっちゃけ黒人差別などはこの映画にあまり関係がない気がしました。

だって、こういう父親って多分どこにでもいるでしょ。

原作者はこの映画を監督するのは黒人しか許さなかったようで、黒人が監督し演じることに深い意味があったようですが、いまいちちびぞうには分かりませんでした・・・。

この映画の良さは、奥さんであるローズとの人物的な対比だったり、息子のコーリーとの関係にあると思います。

親父が死んで、息子が「俺はこの家で一度も親父から逃れられなかった。一度くらいは逃げたいんだ」と言い、トロイの葬式に出席することを拒絶します。

しかしそれを許さない妻のローズ。

このラストは、「父親からは逃れられない」という事実が突きつけられる。どんなに最低でも敬うべき部分はある、と。

父親と息子の間に生まれた亀裂が、父親の死後、息子の中で埋まっていくという形のストーリーはそんなに珍しくないんですが、この映画は演出の仕方が良かったな。家の裏で作られていた「フェンス」という小道具も含め。

誰が見ても憎むべき父親と、それに向き合うことの出来なかった息子。

最後、父親がよく口ずさんでいた歌を息子が歌うシーンがあるんですが、そこが良いんです。
ちびぞうも、父親がよく歌っていた歌を歌える、ということを思い出してハッとしましたね。タイトルも歌手もわからないけれど、歌える曲というのがいくつかあるんです。

自分の中に根付く父親という存在は、自分の意識していないところでひょっこり顔を出してきて、その大きさを自覚させられるという、良い演出でした。

出来れば父親が死ぬ前に、父親に対する価値観を変えられれば良いんですけど、実際それは難しいのかな。”死”というものを媒介して初めて理解したり、心を寄せたりできるというのも、不思議なものです。

 

観終わった後に、自分を形成する”親”という存在について考えられる、良い映画でした。

 

 


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画像引用元:映画.com/IBDB

映画作りを禁止された監督の『人生タクシー』ネタバレ&感想

”上映可能かどうかはイスラム文化指導賞省の判断による
願い虚しく本作に上映許可は出なかった
本作がここにあるのは――支援者のおかげである”

配給会社さま、この映画を日本に届けてくれてありがとう。

ちびぞうが敬愛する映画監督の中に小津安二郎監督がいて、その小津監督の影響を受けたイランのアッバス・キアロスタミ監督がいて、彼の作品も大好きで。

そして2016年に亡くなってしまったキアロスタミ監督の愛弟子であったという、今作の監督ジャファール・パナヒさん。彼の存在は今作で初めて知りましたが、なんというか・・・胸が苦しくなる作品でした。

というのも、規制が厳しいイランで反政府的な映画を撮ったとして捕まった事があるパナヒ監督は、以降20年間、映画を撮る事を国から禁じられてしまっているのです。

保釈には映画人からの訴えも多くあったようで、こんな記事もありました。

今作は、映画作りを禁止された監督がタクシー運転手に扮し、お客さんである街中の人々を隠しカメラで撮影する・・・という体の(おそらく)モキュメンタリー映画となっています。

【映画情報】

【原題】Taxi
【制作国】イラン
【監督/脚本】ジャファール・パナヒ
【出演([]内は役名)】

  • ジャファール・パナヒ[タクシー運転手]

【公開日(日本)】2017年4月15日
【上映時間】82分
【配給】シンカ
【映倫区分】G
【IMDB】7.4/10.0  (およそ10,300人の評価)

【あらすじ】

ダッシュボードに置かれたカメラには、強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士など、個性豊かな乗客たちの悲喜こもごもが映し出され、彼らの人生を通してイラン社会の核心へ迫っていく。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.5/5.0

正直、これを映画として普通に鑑賞するというのは難しい・・・と思います。

ちびぞうはイランの現状も監督の置かれた状況も何も知らずに観たので、この映画がどれほどの危険を冒して撮られた作品なのかという事を本当の意味で理解していないと思うから。


それでも感想は書かねばならぬ!(シヴァガミ風)

実際に勝手にお客さんを撮影しているのか、お客さんという体の役者と会話をしているのかちょっと分からない部分もあるんですが(多分完成度的に後者、つまりはモキュメンタリー)、イランのテヘランで暮らす人々の生活・価値観・死生観など垣間見ることができる貴重な作品だと思います。

最初に乗ってきた男が「タイヤ泥棒より軽い暴力沙汰の事件で死刑になった人」の話をしていて、タイヤ泥棒も絞首刑にすべきだ、と言ったのに対し乗り合わせた女性教師が「盗人にも事情があるかもしれない、犯罪は(周囲の環境も影響して)作られる、問題の根源を知るのが必要」と反論するシーンでも、イスラム法の怖さがチラ見せされていました。

”いつまでも問題が解決しないとしたら、法の適用を間違っている”だそうですよ。

 

映画業界への縛りの厳しさは、海賊版DVDを売る店員の「こうでもしないと外国映画を観られないんです・・・」という台詞や、学校で映画を撮る課題を与えられた監督の姪っ子が語る撮影のルール「女性はスカーフを着用し、男女の触れ合いは無し。善人の男性にはネクタイ(白人社会の象徴)を付けず、イラン人の名前ではなく聖人の名前を使うこと、俗悪なリアリズムに触れない事」にも現れていて切なかった。

監督が「僕の友人はイラン名でネクタイをしているし、善人か悪人かどっちなんだ?」と聞くと姪っ子が「これは映画の中のルールだもの」と言い、「彼を映画に出演させるにはどうしたらいい?」という問いに「(彼の)全てを変える!」と答えていたやりとりが非常に印象的。

(日本は本当に、色んな国の色んな作品を自分で選んで観れる、作品として撮影し発表も出来る、素晴らしい国だ)

この監督の姪っ子という存在が、巧みでしたね。
彼女は映画の課題のためにテヘランの街並みをビデオカメラで撮影しているんですが、その時偶然、結婚式を終えて車に乗り込む新郎が落としたお金をゴミ拾いの男の子がネコババする瞬間をカメラに収める。そしてその男の子を呼び寄せて咎めるんです。お金を返すところを撮影したいと、返してきてと説得する女の子とゴミ拾いの男の子の

「人の為に自分の欲を捨てるところが見たいの」
「ヒーローになるよりお父さんにお金を渡したい」

というやり取りも切なくて、現実に目を向けず自分の信じる正論や理屈ばかりに目を向けている女の子が小さな政府を表しているようでした。

最後に乗車したバラを持った女性とのやりとりは「ようやく釈放されても、外の世界は巨大な独房よ」という台詞が印象的。しかしここの場面はちょっとさすがにイラン情勢の背景を知っておかないと難しい、です。

そして、ダッシュボードに一輪のバラを残して車から去っていく監督と姪っ子の後姿を映すラストシーン。ここの長回しはアッバス・キアロスタミ監督『オリーブの林をぬけて』のラストを思い出す演出でグッと来ました。

この一輪のバラは映画にささげられたものだろう、と解釈している方がいましたが、ちびぞうは当時ガンを患っていたキアロスタミ監督に捧げたバラでもあるのかなぁと感じましたね。

ラストの長回しの中でこのタクシーも強盗に合うというオチも良かった。
冒頭に書いた一文がクレジットの前に出て来て映画が終わるんですが、本当に臓腑にドスンとくる重みのある文でした。

 

この監督が本当に好きな物を好きなように撮った映画が、いつか観れたらいいなぁ。

余談。

そういえば、ビデオ屋の店員が海賊版DVDを見せながら「貴重なクロサワ映画もありますよ」と言っていてビックリしたんですけど、やっぱり黒澤監督は凄いんだなぁ・・・世界に名を轟かせている。(しかしそこは小津監督じゃないのねという静かなツッコミ)

 

 


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画像引用元:映画.com

超絶怒濤のお下品アニメ映画『ソーセージパーティ』ネタバレ&感想

「食われてタマるか!」 運命に逆う彼らの闘いがはじまる!

R15+!

なんとなくしょーもない!という前情報だけで鑑賞!アニメ映画だったとは!

とんでもなくお下品でおバカな内容に対してエドワード・ノートンやジェームズ・フランコ、サルマ・ハエックとキャスト陣がもんのすごい豪華!(笑)更にちびぞう一押しの三枚目実力派俳優、ジョナ・ヒルも出演しています!

いやぁ、これは1人で観て正解でした・・・。

子どもは観ちゃダメ!な公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 Sausage Party
【制作国】アメリカ
【監督】コンラッド・バーノン、グレッグ・ティアナン
【脚本】カイル・ハンター、アリエル・シェイファー、セス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ
【原案】セス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、ジョナ・ヒル
【製作】ミーガン・エリソン、セス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、コンラッド・バーノン
【製作総指揮】ジョナ・ヒル、ジェームズ・ウィーバー、アリエル・シェイファー、カイル・ハンター、デビッド・ディステンフェルド
【編集】ケビン・パブロビッチ
【音楽】アラン・メンケン、クリストファー・レナーツ
【音楽監修】ゲイブ・ヒルファー
【声の出演([]内は役名)】

  • セス・ローゲン[フランク(ソーセージ)]
  • クリステン・ウィグ[ブレンダ(バン)]
  • ジョナ・ヒル[カール(ソーセージ)]
  • ビル・ヘイダー[火酒/テキーラ]
  • マイケル・セラ[バリー(ソーセージ)]
  • エドワード・ノートン[サミー(ベーグル)]
  • サルマ・ハエック[テレサ]
  • ニック・クロール[ビデ]
  • デビッド・クラムホルツ[ラバッシュ]
  • ポール・ラッド[ダレン(スーパーの店員)]
  • グレッグ・ティアナン[ポテト]
  • コンラッド・バーノン[トイレットペーパー]
  • ジェームズ・フランコ[麻薬中毒者]
  • ダニー・マクブライド[ハニー・マスタード]
  • クレイグ・ロビンソン[ミスター・グリッツ]
  • サルマ・ハエック[テレサ・デル・タコ]
  • アンダース・ホルム[トロイ(ソーセージ)]

【公開日(日本)】2016年11月4日
【上映時間】89分
【配給】ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント
【映倫区分】R15+
【IMDB】/10.0  (およそ人の評価)

【あらすじ】

郊外のスーパーマーケットで、お客に選ばれ、買われることを夢見て毎日陳列されている食材たち。ソーセージのフランクは、恋人であるパンのブレンダと結ばれ、ホットドッグになる運命が待っていると信じていた。2人揃ってカートに入れられ、ついに夢が叶う時が来たと喜ぶ2人だったが、カートにアクシデントが発生し、スーパーマーケットに取り残されてしまう。絶望する2人だったが、食材としていずれ人間たちに食べられてしまう運命にあったことを知り、アクシデントのおかげで命拾いしていたことに気付いたフランクとブレンダ。やがて食材たちは、人間への反撃を始める。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレしてるよ!)】

☆2.3/5.0

アニメとしての出来はさすが、アニメ映画のシュレックなんかを作っていた本家のプロだけにハイクオリティ!(逆に何でこんな映画を・・・)

しかし・・・完全に好みの問題だと思いますが・・・。ちびぞうはこういう「下ネタで笑う!」みたいな映画であんまり笑えないんですよねぇ・・・。結構古めな映画だと『メリーに首ったけ』とかありましたが、それもあんまり好みじゃなかったもんなぁ。

開始直後からやたらと「ファック!」と繰り返していてとにかく登場人物たちの口が悪いところは、可愛らしいアニメーションと似つかわしくなくて斬新でしたね。よっぽどエグい内容を想像していたのか、ラストのらんこうしーん(あえて平仮名)までは結構退屈でした。

あ、一か所だけ笑いました!天才キャラのガムがスティーブ・ホーキンス博士をまるまるオマージュしていたところ(笑)

ほんっとうに、いい大人たちが徹夜明けのテンションでバカをやっちゃったーって感じがして笑えました(笑)

社会の縮図がある

食材たちに様々な人種をあてはめて現実の問題を浮き彫りにする・・・というパロディなやり方は結構深い物を感じさせましたねー!

スーパーの外の世界を天国だと信じていたけども、実際は地獄だった、みたいなのを見せるやり方(キッチンでの虐殺シーンは本当におそろしい)も良かったし、売られていく食材たちが悲鳴を上げている状況をなんとかしたくて、「外は天国!」という歌を作った・・・という過去の裏話も面白かったですね。歴史は人間が意図して作っている感がある、というか。深い。

・・・さすがにこれでアカデミー賞を狙うのは厳しいですが、ただのおバカ映画で済まされない感じになっているのは、こういったパロディ要素も徹底しているからなんでしょうね(笑)

まとめ

89分というB級ホラーにありがちな短さなのにやたらと長く感じた!!!!

ちびぞう的に、事前にもっとヤバい感じを想像していたせいかもしれません(笑)

しかしラストの”みんなでくんずほぐれず”なシーンは目が覚めるほど突き抜けているので、退屈に思う人もそこまでは頑張って観て!!

 

 

 


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尊厳死を扱かった問題作。映画『世界一キライなあなたへ』ネタバレ&感想

愛するひとが、半年後に永遠の旅立ちを選ぼうとしていたら――

賛否両論の問題作!映画仲間に激押しされてた事もあって観てみましたー。
DVDでの鑑賞、公式サイトはこちら

ロマンチックコメディなラブストーリーですが、取り扱っているテーマの重さから批判も多くあるようです。

ちびぞうはどちらかといえば否定(?)派!なので感想を読む場合はご注意ください!

【映画情報】

【原題】 Me Before You
【制作国】アメリカ
【監督】テア・シェアイック
【脚本/原作】ジョジョ・モイーズ『ミー・ビフォア・ユー 君と選んだ明日』
【製作】カレン・ローゼンフェルト、アリソン・オーウェン
【製作総指揮】スー・ベイドン=パウエル
【撮影】レミ・アデファラシン
【美術】アンドリュー・マッカルパイン
【衣装】ジル・テイラー
【編集】ジョン・ウィルソン
【音楽】クレイグ・アームストロング
【出演([]内は役名)】

  • エミリア・クラーク[ルイーザ・クラーク(ルー)]
  • サム・フランクリン[ウィル・トレイナー]
  • ジャネット・マクティア[カミーラ・トレイナー]
  • チャールズ・ダンス[スティーブン・トレイナー]
  • ブレンダン・コイル[バーナード・クラーク]
  • ジェナ・コールマン[カトリーナ・クラーク(トリーナ)]
  • マシュー・ルイス[パトリック]
  • スティーブン・ピーコック[ネイサン]
  • サマンサ・スパイロ[ジョージ・クラーク]
  • バネッサ・カービー[アリシア]

【公開日(日本)】2016年10月1日
【上映時間】110分
【配給】ワーナー・ブラザース
【IMDB】7.4/10.0  (およそ135,000人の評価)

【あらすじ】

性格は前向きなだが、夢にチャレンジすることに躊躇し、仕事を転々としながら、なんとなく毎日を過ごしているルー。彼女の働いていたカフェが閉店してしまい、職を失ったルーは半年限定で介護の仕事に就く。ルーが担当することになったのは、快活でスポーツ好きだったが、バイクの事故で車椅子生活を送ることとなった青年実業家のウィルだった。当初、ウィルはルーに冷たく当たるが、ルーの明るさがウィルの心を溶かし、やがて2人は互いに最愛の存在となっていく。【引用元:映画.com

【感想】

☆2.4/5.0

うーん。どうなんでしょうこれは。

事故で車いす生活になったイケメンと恋に落ちたら、彼は生に絶望しており安楽死を心に決めていた・・・という話なのですが。

全体的に思ったのは

金があればなんでもできますよねぇ

という部分。いやほんと身もふたもないんですけども、ヒロインと距離を縮めるまでの流れの中で「金がなかったら出来てないじゃん」と思えるものが結構多い。

尊厳死にしても、スイスで安楽死をするのには90万近い費用がかかる場合もあるそうです。

死ぬのにも金がいるんだよ・・・

という。あまりにも現実味がない話ですよこれは。

更に、すでに何年も付き合っていたヒロインの彼氏が相当KYに描かれている部分。
「車いすのイケメンの方がいいじゃん!」と思わせるための当て馬感がものすごい。でも実際、そんな何年も付き合ってて急にそんな微妙に思い始めるものかな・・・と。ご都合過ぎる脚本です。

ご都合過ぎると言えば、主人公の男!!!

死ぬと決めてるのに恋愛するなんてどういうつもりなんですか。

いやぁもう自己中の権化かよと。恋に落ちるのは勝手だけど、彼女のその後の事を思えば絶対に距離は詰めない方がいいに決まってます。彼が彼女を想うがゆえに生きようと決めるならまだしも、結局は意思を変えられない。だとすれば、彼女は一人で悲しんで背負っていくだけ。

この恋愛に意味なんかあったの?

という疑問すら浮かんできます。
もう少し、男性側が恋してしまうことに対する危機感を見せてくれたり、死を選ぶことに対する迷いを見せてくれたなら、彼女の存在も意味がないわけじゃないんだなと思いますが・・・。

やっぱり、愛すなら一緒に生きなきゃ。

死ぬなら周りを巻き込むべきではないですよね。

ここらへんは、各自の死生観というか、価値観に委ねられる部分があると思うので一概に「だからつまらない映画だ」とか決められないとは思いますが。

ちびぞう的にはご都合主義満載のお涙ムービーに安楽死テーマをもてあそばれたような印象でしたね。

良かった点!

個人的に良かったなーと思ったのは、ヒロインの衣装!

ちょいダサな奇抜ファッションが逆にかわいいです!!

それから、彼女が蜂柄のタイツの話をしたらそれを覚えていて誕生日にプレゼントするというロマンチストぶりが良かったですね・・・あれは普通に嬉しいと思う。

そんなところですね!

ヒロインの女の子は個性的で明るく、同性が見ても好感を持てるキャラで魅力的でした(*’ω’*)

 

 


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ドラン監督のサイコサスペンス映画『トム・アット・ザ・ファーム』ネタバレ&感想

「10月のトウモロコシはナイフ」

画像引用元:IMDB

カナダの奇才・天才、グザヴィエ・ドラン監督が、ミシェル・マルク・ブシャール(カナダの人気劇作家)の同名戯曲を映画化!

ドラン監督は、私の敬愛するガス・ヴァン・サント監督も一目置いているという事で追いかけ始めた監督さん。非常にアーティスティックで繊細で、セクシャルマイノリティな作品を作る監督さんです。

監督だけでなく、脚本、編集、衣装まで手掛け、更に主演までしてしまうという天才ぶり・・・最初に書いた脚本が10代の時の物だったということもあり、「若手のカリスマ」とも呼ばれていますね。

彼の作品は、『私はロランス』→『マイ・マザー』→『胸騒ぎの恋人』→『Mommy/マミー』と来て5本目の鑑賞になります。

アップリンクさんの公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 Tom a la ferme
【制作国】カナダ、フランス
【監督/編集】グザヴィエ・ドラン
【脚本】グザヴィエ・ドラン、ミシェル・マルク・ブシャール
【原作】ミシェル・マルク・ブシャール
【製作】グザビエ・ドラン、ナタナエル・カルミッツ、シャルル・ジリベール
【撮影】アンドレ・トュルパン
【音楽】ガブリエル・ヤーレ
【出演([]内は役名)】

  • グザヴィエ・ドラン[トム]
  • ピエール=イブ・カルディナル[フランシス]
  • リズ・ロワ[アガット]
  • エブリーヌ・ブロシュ[サラ]
  • マニュエル・タドロス[バーテンダー]

【公開日(日本)】2014年10月25日
【上映時間】100分
【配給】アップリンク
【映倫区分】PG12
【IMDB】7.0/10.0  (およそ12,000人の評価)

【あらすじ】

。恋人の男性ギョームが亡くなり悲しみに暮れるトムは、葬儀に出席するためギョームの故郷を訪れる。しかし、ギョームの母アガットはトムの存在を知らず、息子の恋人はサラという女性だと思っている。トムの存在を唯一知るギョームの兄フランシスは、トムに恋人であることを隠すよう強要。当初は反発を覚えたトムだったが、次第にフランシスの中に亡きギョームの姿を重ねるようになり……。【引用元:映画.com

【感想(容赦なくネタバレしているよ!)】

☆3.9/5.0

主人公のトム(ゲイ)が恋人の葬儀で訪れた農場で出会う、恋人の母・兄・そして残された”嘘”

この作品は他のドラン監督の作品とは明らかに毛色が違い、鮮やかな色彩や明るい音楽もなく、終始暗く、息が詰まるような雰囲気が漂うサイコスリラーとなっています。
(『サイコ』とかをパロってたりしてちゃんとホラー感も出してる!!)

監督本人は「複雑な脚本を練る時間がなかったので戯曲を元にした」と言っていたらしいので、若干脚本に隙はあるのだろうけども、それでも十分「凄い」と思えるその才能が憎い。嫌味にすら聞こえてしまいますね!(笑)

物語の解釈

”抑圧されたマイノリティからの解放”とかがまぁ分かりやすいと思います。

暴力的で目的のためには手段を選ばず、相手を飼いならしてしまう兄貴像。これは彼がラスト付近でトムを追って見せた背中、そのTシャツに書かれた三つの文字(USA)の象徴ということなのでしょうね。(つまりアメリカという国、その存在のセクマイへの抑圧を兄のキャラクターに落とし込んでいる)

しかし!私にはこの映画を観ていてどうしてもぬぐい切れなかった一つの”仮説”があって、それは物語が進めば進むほど確信へと変わっていってしまう。

単なる妄想に過ぎないと思うのでここから先はスル―でどうぞ(笑)

ちびぞうの妄想的観測

この映画は、”愛する者を失った二人の男”が心に開いた穴を埋め合う哀しい哀しい愛の物語なのです!!!
簡単に言えば、兄フランシスもゲイだろ、ということ(短絡的)。

そう感じた理由は、兄の全ての行動にあります。

あれだけ体格もデカく暴力的な兄が、母親にビンタをくらっても何も言わない場面があります。あそこで一瞬、抑圧され歪んだ家庭の姿が垣間見えます。
それに加えタンゴを踊るシーンでの兄の台詞。トムを脅してまで嘘をつかせ必死に母の平穏を守ろうとする姿と比べるとどうもミスマッチだと感じるんです。兄の母親に対する愛情は、そこまで深くない気がする。

閉塞的で信仰心の強い田舎の村で、ゲイであることは重い罪であり、バレれば大変なことになるのだろうと予測できますよね。

兄が本当に恐れていたのは「死んだ弟がゲイだとバレてしまい母親を悲しませることではなく、その”事実”が明らかになった時、自分にも飛び火してしまうこと」だったのではないか。とちびぞうは考えたのです。

そう考えて観てみると、

  • 昔兄弟でタンゴを踊っていたこと
  • バーでの過去話(顎を破壊された男が握っていた”噂”は最後まで明かされないが、彼はギョームのことだけでなくフランシスの事も何か掴んでいたのではないか。そうでなければそこでのフランシスの暴走っぷりは完全に意味不明になってしまう)
  • トムとの暴力的で官能的な絡み(複数回)
  • トムとフランシスのベッドの配置の変化・・・(離れて置いてあったベッドが後半、隣り合っています)

などなど、全ての要素がそこ(兄ゲイ説)に繋がっている気がして仕方ないんです。
ゲイほどゲイを憎む、とも言うしね。
そう、そしてこの映画の肝である”嘘”というのは兄がついてる盛大な”嘘”ともリンクするのです!(強引)

同じ男を愛した二人はお互いの中に愛する人の姿を見て、現実ではなく虚構の関係性にハマっていく。。兄は支配することで自分を満たし、トムはそれに順ずる(依存する)ことで満たされた(だから逃げられず戻ってしまうんです)。

しかし後半のサラの登場やバーでの昔話などによってようやくトムは現実を見る決意をする。傷を舐め合っていても仕方がないんだと、過去との決別、再出発をするわけです。

・・・と、そういう解釈・裏設定があると切ないじゃないですか!っていうちびぞうの妄想でした。

まとめ

上の方でも書きましたがTシャツの文字が象徴していることがテーマなのは明らかなので・・・監督は特に兄ゲイ説を意識してなかったかもしれないですね。
ジャンルはサイコサスペンス、だし。

しかしこういう見方が出来る余地が”隙”なのか”深み”なのかは分かりませんが、とにかく楽しく夢中で観れたことは確か。

映像の美しさ、ドラン監督の美しさ、脚本の凶暴さ・・・好きな人はハマること間違いなし。

『Mommy/マミー』で使われていた画面アスペクト比のテクニックもまた見れたし、ファンとしては感動しました。
やっぱりドラン監督は凄いのだ!!

というなんとも雑な感じで〆ます。笑

ああ早く監督の次回作が観たい!!!絶対に劇場で!

 

 


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絶対に【恋人と観てはいけない映画8選!】気まずい。

どうも、ちびぞうですー!

そろそろクリスマスに向けて恋人たちが色々とデートの計画を立てたり立てなかったりしている時期だと思います。

今年もくりぼっちなちびぞうが、そんな恋人たちが「おうちデート」をする時に間違って

「鑑賞後気まずい空気が流れてしまう」映画を選んでしまわないように、

【恋人と観てはいけない映画8本】

を選び抜きました!!簡単なあらすじとどう気まずいのかを一言添えて紹介。

対象作品はこんな感じ。

  • 普通の恋愛映画っぽいジャケット
  • 普通の恋愛映画っぽいタイトル
  • タイトルとジャケットからは想像出来ない突飛な展開、鬱展開
  • 作品の面白さとは別に「恋人と観ると鑑賞後気まずくなる」

恋人と観て気まずい空気が流れないよう、クリスマスデートには借りないように気を付けてくださいねー!

ブルーバレンタイン

ラ・ラ・ランドでも有名なライアン・ゴズリングさん主演作。

●おおまかな内容
【主人公とヒロインの出会ってから恋に落ちるラブラブな蜜月期と、結婚7年目の冷め切った倦怠期が交互に描かれる、過去と現在が入り混じる愛情の変化が切ない異色作】

この説明だけで分かりますね、カップルで観ると「その暗い未来」を予想させてしまうような鬱な気持ちに二人で落ち込んでしまうこと間違いなしです。

ドン・ジョン

これまたスカヨハとジュリアン・ムーア、そしてジョセフ・ゴードン=レヴィット主演(監督)作品という豪華な一本!

●おおまかな内容
【AV中毒、自慰中毒なスーパープレイボーイが二人の女性の間で揺れたり、真の愛を見つけたり見つけなかったりする男性の性事情に対する本音が赤裸々な作品】

何が気まずいって主に赤裸々な部分。パートナーに対し「自分もこんな風に思われてるのかな・・・」という不安は持ちたくないもんですよね(笑)こういう赤裸々なところをあけっぴろげに出来るカップルは素敵だと思いますが・・・きっと一般的には隠したいところが見えている作品だからこそ注意が必要!

胸騒ぎの恋人

カナダの天才、グザヴィエ・ドラン監督、主演のアーティスティックな作品。

●おおまかな内容
【ストレートの女性と、ゲイの男性が同じ二コラという男性を好きになるという一風変わった三角関係が描かれます】

当人同士、もしくはこういう状況に陥った人でなければ理解しづらい恋愛模様、しかも二コラを愛する二人もちょっと距離感が特殊・・・共感できる人はあまり多くはなさそうです。

愛、アムール

ミヒャエル・ハネケ監督作。

●おおまかな内容
【突如病に倒れてしまう妻を長年寄り添って来た夫がお世話する。老々介護のリアルが描かれている臓腑に重たいハードな作品】

ハネケ監督と言えばこのブログでも何度も書いてるように「鬱な映画」で有名な監督。アオリには「至高の愛の作品」とありますが、よくある感動ものとは全く違います!決して気軽に手を出してはいけません。

トゥー・ラバーズ

アイアンマンのヒロインでも有名なグウィネス・パルトロウ主演作!

●おおまかな内容
【婚約者に捨てられ躁うつ病になり自殺未遂をした男が、正反対の魅力を持つ二人の美女の間で揺れ動く恋模様を描く】

一言で言えば「同時進行複数形!」です。とても味わい深い作品ではありますが、恋人とハッピーな気持ちで観たい作品かと言うとそうではない・・・ちょっと主人公の状況からしてちょっぴり胃もたれしてしまうかも。

愛してる、愛してない・・・

『アメリ』で有名なオドレィ・トトゥ主演作!

●おおまかな内容
【一本のバラをきっかけに恋をした男性の”ストーカー”と化してしまうヤンデレ女子の恐怖を描いたサスペンスストーリー】

アメリのイメージが強いこの女優さん×このパッケージ!「純愛ものかな?」と思って観るとしっぺ返しを食らってしまいます!!!

テイク・ディス・ワルツ

奇遇にも、上で紹介した『ブルー・バレンタイン』のミシェル・ウィリアムズ主演作・・・。

●おおまかな内容
【結婚5年目に起きる夫婦の変化。旅先で出会った青年に心惹かれるヒロイン、帰宅するとなんとその青年が自宅の向かいに住んでいると知り禁断の関係へと踏み出してしまう】

いわゆる不倫もの。奥さんの方が青年と火遊びするストーリー。これも決して軽い作品ではなく、夫婦関係の危うさにメスを入れている重めの作品。カップルでの鑑賞後、溜息が漏れてしまうでしょう。

それでも愛するバルセロナ

スカヨハ、そしてペネロペ・クルスという二大美女が共演!!

●おおまかな内容
【夏のバルセロナ、女友達と二人でバカンス。そして出会ったイケメン芸術家に二人して恋に落ち、更にその元奥さんまで出てきて大混乱なコメディもの】

コメディと言ってますが、まず二人そろって同じ男に恋をしてその両方と関係を持つ芸術家だとか、そこに出てきた元奥さんと三人で愛し合っちゃおう!みたいな「ザ・おフランス」的、恋に狂った人たちの価値観が遠すぎて、置いてきぼりになってしまうので笑いとは程遠い・・・。少なくとも日本人の感覚にとっては複雑すぎます。

 


以上、ちびぞう厳選の【恋人と観てはいけない映画8選】でした!

 

メリークリスマース!!!!

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天才児の育て方?映画『ギフテッド』ネタバレ&感想

「メアリーがこんなに素敵で賢く優しい子なら――育て方は正しかった」

映画仲間たちとの忘年会にて、鑑賞。

何の前知識もなく予告も観ずに行ってきました!

監督は『500日のサマー』のマーク・ウェブ氏!そして主演にはキャプテン・アメリカで有名なクリス・エヴァンス!

子役のマッケナちゃんがとにかく可愛いです・・・。

タイトルにもある『ギフテッド』というのは、”特別な才能を持つ子ども”という言葉。この映画で初めて知りました。

パンフはこんな感じ。

来ました!フォックスサーチライトマガジン!Vol.9!お洒落!
50Pで税込み820円。

ギフテッド教育についての座談会のページが非常に興味深かったです。

【映画情報】

【原題】 Gifted
【制作国】アメリカ
【監督】マーク・ウェブ
【脚本】トム・フリン
【プロデューサー】カレン・ライダー、アンディ・コーエン
【エグゼクティブ・プロデューサー】グレン・バスナー、ベン・ブロウニング、モリ―・アレン
【撮影監督】スチュアート・ドライバーグ、ASC
【プロダクションデザイナー】ローラ・フォックス
【編集】ビル・バンコウ、ACE
【コスチュームデザイナー】アビー・オサリヴァン
【音楽】ロブ・シモンセン
【音楽スーパーバイザー】ランドール・ポスター&メーガン・カリアー
【出演([]内は役名)】

  • クリス・エヴァンス[フランク]
  • マッケナ・グレイス[メアリー]
  • リンゼイ・ダンカン[イブリン]
  • ジェニー・スレイト[ボニー]
  • オクタヴィア・スペンサー[ロバータ]

【公開日(日本)】2017年11月23日
【上映時間】101分
【配給】 20世紀フォックス映画
【映倫区分】G
【IMDB】7.6/10.0  (およそ人53,400の評価)

【あらすじ】

生まれて間もなく母親を亡くした7歳のメアリーは、独身の叔父フランクとフロリダの小さな町でささやかながら幸せな毎日を送っていた。しかし、メアリーに天才的な特別な才能が明らかになることで、静かな日々が揺らぎ始める。メアリーの特別扱いを頑なに拒むフランクのもとに、フランクの母エブリンが現れ、孫のメアリーに英才教育を施すため2人を引き離そうと画策する。母の画策に抵抗を続けるフランクには、亡き姉から託されたある秘密があった。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレしているよ!)】

☆3.8/5.0

2017年ベスト1を狙えたかも!

と、思うほど面白いな・・・と感じました。

が、しかし映画仲間7人で観たんですが、意見は半々、全くダメな映画だと言う人もいれば相当良かったと褒める人もいる結果でした。

行間を読ませる演出が多い

意見が大きく割れる原因についてはおそらく、「物語の穴」の部分が多く、不明瞭な情報をとっちらかせてる印象があるからでしょうかね。

ツッコミどころが多い。とか、説明不足。とか。

ちびぞうは、この不明瞭な点に関しては曖昧なままでも十分想像で補完出来うるなと思いました。

脚本が好き

例えば、序盤でメアリ―が持つ数学に突出した才能を大人が見出す辺り。彼女が大人顔負けの頭脳を持っていることが発覚しますが、フランクの話す”入念に”という言葉の意味をメアリーは知りません。
「入念って?」
「知らないなら学校に行かなきゃね」
というやり取りがあるんですが、これはメアリーが突出しているのはある1点の才能の部分のみで、それ以外は普通の7歳の子どもと何ら変わらない、という事を示すシーンでもあります。

そして”普通な子どもとして普通の学校に通わせたい”というフランクの想いもここで見えてきます。たったこれだけのやり取りで分からせる!そういう会話のテクニックが多くみられる映画だと思いました。

群像劇でもある

パッと見は、姪っ子と叔父の家族の愛の物語であり、特別な才能を持っているがゆえに大好きな人と引き離されてしまう、という切なさが描かれているお涙頂戴な作品・・・なのですが。

実はこの作品、群像劇でもあると思うんです。

  • メアリ―の自殺した母親ダイアンの悲しい人生と、母親への想い
  • 数学に人生を捧げられなかった自分の選択を呪い、その全てを子ども、そして孫に託そうとする祖母イブリン
  • ギフテッド教育を受けたが”数10人”が辿り着ける天才の高みには辿り着けなかったフランクの想い
  • 数学の才能を持ち、普通の学校では生きにくさを感じているメアリー

主にこの家族の、それぞれの想いが交錯した群像劇なんですよね。
どの人にも人生があって、考え方があって、己のためであったり、誰かのためであったり、選択し、後悔し、何かを委ねたり、取り戻そうとしたりする。
そんな人間としてのあがく姿というのが彼らの関わりを通して見えてくる。

そこが面白かった・・・!!!

泣けたシーン

ちびぞう的に泣けたシーンは

  1. 祖父イブリンが裁判で「ダイアンの愛していた男性と無理やり引き離したこと」を理由に自殺の原因は貴方にあるのでは?と言うニュアンスで暗に責められ、己の主義主張(ダイアンが数学を愛していたこと、彼女が数学に徹することにどれだけの歴史的価値があるかなど)を熱弁する場面
  2. フランクに「離れたくない置いて行かないで約束したじゃない」と縋りつくメアリーの場面
  3. 実は難題の証明を達成していたダイアンがそれをフランクに託し、「母親の死後」に公表して欲しいと頼んだと気付かせる場面

この3つですかね。

1は、とにかく母親の狂信的なまでの数学への固執が悲しくて悲しくて。とても可哀そうな人にも見えるけど、でも言っている事が100%間違っているかといえばそうでもない・・・。自分でも自分のおかしさは理解していて、それでも認められない。そんな彼女の熱弁になんとも言えない気持ちになり、涙腺がやられましたね。

2はメアリーの名演技が涙を誘います。ほんとずるい。

3は、個人的に息を飲んだ名シーン!
「死後に公表してくれと頼まれた」
「ダイアンが死んだのは6年も前よ」
「彼女の死後じゃない」
この3つのセリフのやりとりだけで・・・見えてきます。ダイアンの真意、母親への想い、自殺の理由・・・ギフテッド教育の闇。そしてこのイブリンに対する復讐とも言える遺言は、母親の異常なまでの数学へのこだわりが前半で強く描かれれば描かれるほど、効いてくる演出になってるんです。
それが本当に上手だなぁと思いましたね。

まとめ

パンフレットで初めて知りましたが、特別な子ども達に受けさせる「ギフテッド教育」というものがあるんですね。

学校に適応できない子供は「普通ではない」ように見えて実は才能を持っている・・・。というのは親にとってとても大きな希望になりますよね。

だからと言って、本当に一般的な子どもたちの過ごす時間から切り離し、特別な教育を与えることだけが彼らのためになるのか?という疑問。本作はそこにスポットを当てた映画です。

そして、ただ単純に「子どものあるべき場所」というものを示しているだけでなく、「ギフテッド教育」で目覚ましい結果を残せなかった人もまた親になる、という教育が残した傷の連鎖のようなものも合わせて見せてくれるところがとっても興味深い作品。

普通に生きる、その人らしく生きる、そして何よりも「自分が楽しめる人生を歩む」事の大切さを教えてくれる。素晴らしいです。

クスッと笑える場面もあるし、笑って泣けてほっこりできる、

2017年では、上位3本に入る名作!

最後にこれだけ

猫を救う人に悪い奴はいないよ!!!!!(笑)

 

 


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