薄暗い教会、十字架を背景に舞台に立つ少女たち。
一人、また一人。演劇的に読み上げられる”遺書”。
自殺は敗北宣言だ。
私は絶対にそんなことをしない。
大丈夫。いつか必ず解放される。
そう信じていた。
【制作国】日本
【監督】三島有紀子
【脚本】松井香奈/三島有紀子
【原作】湊かなえ
【出演】本田翼、山本美月、真剣佑、佐藤玲、児嶋一哉
【テーマ曲】GLIM SPANKY – 闇に目を凝らせば
【公開日】2016年10月8日
【上映時間】119分
【配給】東映
原作未読。
【あらすじ/解説】
「人が死ぬ瞬間を見たい」というちょっと奇妙な夢を抱く高校生の由紀と敦子の物語。夏休み、由紀は余命わずかな子どもたちと触れ合うボランティアをして己の欲求を満たすことに。一方いじめに悩む敦子は、死を見ることで生きる希望を取り戻そうと老人ホームのボランティアを始める。
★は2.7。少し厳しめかもしれません。
17歳と言えば、他にも『17歳』や『17歳のカルテ』『17歳の肖像』など、様々な監督がこの年齢をテーマに撮っていますね。
二度と戻って来ない青春時代は大人にとっては特別に思えるし、特にこの多感な時期の少年少女の頭の中はとても複雑で危うくて、私にとっても非常に興味深い題材です。
この映画の好きな点は映像の美しさと、あの年代の少女達をとてもリアルに描いているところ。あと群像劇が好きなのでそこもポイント。
演出の部分で言えばオープニングで少女たちによって語られる”遺書”、そしてラストのあの演出。”自殺による死”というものが意外にも身近であり、誰がそれを選んだっておかしくない…という事を暗示しているように思えました。二周目からはまた違った見方が出来る、好きな演出でした。
きっと小説は面白いんだろうに、どうしてこうも批判的な意見が多いのか。
個人的に感じた残念な点を述べてみます。
まず私は最初、この映画は”小さな悪の華”のようなテイストで、若者の純粋な残酷さを描いているサイコスリラー系かと思っていました(多分予告のせいでそう誤解してる人は大勢いる)。が、実際蓋を開けてみると二人の少女の友情がクローズアップされた青春ドラマだったわけで。もちろん湊かなえさん独特の後味の悪さはありますが、あまりにもイメージと話の展開が違った…。こういうのたまにありますよね!ミスリードされた的なね!
だけど、本当に内容が良ければ予告と多少違っていたって「面白い!」となるものなので…まぁそういうことかな(笑)
あとは、お話の隙が結構大きいと感じる事。上に貼らせて頂いた解説にあるような内容すら、映画を観ていて把握出来なかったりするので、あまりにも説明不足かと感じました。監督の取りたい画を優先しすぎて雰囲気作りに偏り過ぎてしまったのかな。(確かに映像はすごく素敵!)それから、観客がカタルシスを感じるであろう脚本の”仕掛け”が上手く機能していないという点。逆にそのせいでヒロイン二人の間で交わされた重要な台詞を否定してしまっているような気さえします。
最後にどうでもいい私情を挟んだコメントを。
規律の厳しいカトリック系の女子高。少女たちは心に闇を持ち、他者をあるいは自身を傷付けていく。そうあらずにはいられないような、閉塞感のある場所が舞台の作品ですが、実は私の出身校もカトリックの女子高で、とても規律に厳しい学校でした。
当時、周囲の女の子たちはとても傷付いていて、危うく、いつも際どい”綱渡り”をしているように見えました。腕に自分で付けたであろう多数の傷を包帯の下に隠している子もいました。
ある時仲良くしていた後輩がリストカットをしてしまって、その子の友達が激怒して彼女を叱り、いつの間にか二人ともが泣いていた。きっと後輩はその時、その友達に救われたんだろうなと思いました。
この映画を観ていてふとその場面に遭遇したことを思い出しました。救われる人もいれば、救われない人もいる。その人たちの違いはなんだろうと考えた時、やはり周囲に叱ってくれるほど想ってくれる人がいたかどうか、が大きいと思います。
自分の過去の環境から、ヒロインたちが他人事とは思えず、かなり感情移入してしまったなぁ。一緒に観た人は「理屈っぽくて捻くれてる」と言っていましたが、10代の女の子のそういう部分を描いている話ですし、ある程度そこらへんは予測しないとですよね。
これで映画が良ければハイスコア叩き出すと思うんですけど、あー残念。
湊かなえさん原作の映画やドラマは追いかけてますが、本は一冊も読んだことがないのでこれを機に読んでみようかな。原作では友情パートは群像劇の一部として描かれているだけらしいのも気になるところ。
あ、エンドロールで流れるテーマ曲もとってもダウナーで素敵です。おすすめ。